街場のメディア論 贈与経済と利他的。

街場のメディア論 (光文社新書)

街場のメディア論 (光文社新書)

内田樹さんの街場のメディア論を読んで一番興味深い言葉が贈与経済でした。
資本主義ではなく、経済システムとして贈り物から始まる価値交換の仕組み。
マオリ族の霊的贈り物の概念「ハウ」。マルセルモースが「贈与論」で書いた内容の紹介。

「それは贈り物を受け取った人間は、それをくれた人間に直接お返しを返礼するのではないということです。
 何かをもらった。それを次の人にあげた。そしたらその返礼がきた。
 返礼を受け取った人間はそのとき初めて、それが贈り物であったことに気がつく。
 受け取った返礼は自分のところに留めてはならない。そうしないとその人には何か悪いことがおこる。」

結局は、ことばの呪縛だと思うのですがそれはどうでもよいです。
たまたまここ1年くらい利他的という言葉について考えていたのですが、どうもしっくりこない。
「利他的に動く」というのが、結局最後には自分にとっていいことが起こることを期待しているみたいで、
「他人の利益のため」とは思えなかったのです。

そんな折、内田樹さんの本で何か引っかかるものを感じました。
整理できないけれど、書きながら考えるとこんな感じでしょうか。

利益というと、貨幣のイメージが強い。しかし本来の価値は貨幣と交換可能な価値とは限らない。
贈与の連鎖が続くと、どこかでその価値を見いだす人が現れる。しかしその返礼はまた贈与した人にとっての
価値になるとも限らない。その場合また別の人に贈与されるかもしれない。
同じ様に利他的に動くといっても、その活動が人の利益になるとも限らない。
利他的と考えず、自分の活動そのもの、またはその成果を贈与すると考える。
返礼は直接自分に返ってこないかもしれないが、その返礼もまた「贈与」となって流通させれば、
世の中はもっと面白くなるんじゃないかと思いました。
それなら納得がいくなと。

返礼を期待した贈与。ただしお返しは自分の価値に値しないかもしれない。
そもそも、自分まで到達しないかもしれない。
でもお返しが、また他の人の贈与となる。きっと面白い。そんな映画があったかな?